スズキのコンパクトハッチ、「スイフト」の現行モデルが登場したのが2023年12月。その後順次発売され、今でも毎月2,000台以上を販売しているスズキの普通車の中心的なモデルです。
その「スイフト」のスポーツモデルとして「スイフトスポーツ」も人気があり、私もこれまで3代に渡りスイフトスポーツに試乗させていただき、その走りの完成度や楽しさを満喫していました。本格的なチューニングをしていながら、乗り心地を犠牲にしない作りの良さは、他の国産Bセグメントスポーツハッチには無い独特なもので、指名買いしていたユーザーも少なくないはずです。
さて、これまでベースのスイフトがフルモデルチェンジした約1年後にはスイフトスポーツもフルチェンジ版が登場していたのですが、現行のスイフトが登場してすでに1年半が経とうとしている今現在でもスイフトスポーツのフルモデルチェンジ版が登場する予定は出ていません。
代わりに、先代スイフトスポーツ(ZC33S型)の限定モデルとして「ZC33S ファイナルエディション」というモデルが台数限定(台数は不明)で発売されていますが、これも予定台数に達したら販売終了となる見込みです。
果たして、今後スイフトスポーツは出るのか?出ないのか?ファイナルエディションの売れ行きはどうなっているか?についてちょっと考えていきたいと思います。
スイフトの販売台数推移
ここで、スイフトの販売台数を見てみましょう。数字はすべて1月~12月の年間の登録台数で、素のスイフトとスイフトスポーツを合算した台数になります。また、( )内は国産すべての車種中での登録台数順位になっています。
2022年:25,113台(23位)
2023年:26,589台(25位)
2024年:33,131台(22位)
現行スイフトが登場したのが2023年末なので、2024年の登録台数が伸びています。スイフトスポーツ単体の登録台数は統計に出てきていませんが、どうもスイフト全体の半分弱がスイフトスポーツの台数となっていたようです。
ちなみに、現行スイフトが発表された際にスズキから出された年間目標販売台数は30,000台ということで、初年の2024年については目標を突破したことになります。
また、同様に2025年1月~3月までの登録台数の合計を見ると、7,678台になっており、一概に言えませんが年間で考えると30,712台と辛うじて目標販売台数を超えることになります。
ただ、標準のスイフトスポーツもファイナルエディションも今後予定台数がすべて売れて、登録台数が止まると、目標販売台数に到達しない可能性も出てきますよね。
ちなみに、2024年の登録台数トップは、Cセグメントのトヨタ・カローラで166,956台。2位はBセグメントのトヨタ・ヤリスで166,162台。どちらもスイフトの販売台数と比べたら大きな差がありますが、カローラもヤリスもシリーズ(カローラツーリングやヤリスクロス等)すべての台数が含まれるので、派生車種が多い強さがありますし、トヨタの販売網の強さもあっての台数になっているものと思います。
スイフトは派生車種としては「スポーツ」しかありませんが、「スイフト」としての販売台数を伸ばすには必要なモデルになると思うのですが、どうでしょうかねぇ?
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ZC33S型のスイフトスポーツを超えるモデル作りが難しい?
スズキは今、マイルドハイブリッド技術を自社の様々な車種に展開し、燃費の向上と環境負荷軽減への貢献を目指しています。現行スイフトも一部エンジン単体のグレードもありますが、1.2リッター直3DOHC+ハイブリッドのグレードが主流になっています。
一方、ZC33S型のスイフトスポーツは、1.4リッター直4DOHC直噴ターボが搭載されており、もし今後新たなスイフトスポーツを開発するなら、ユーザーはZC33S型よりもパフォーマンスUPを期待するでしょうから、エンジン開発が難しいのかもしれませんね。
パフォーマンスUPの観点で言うと、スイフトスポーツの開発を行ううえでは、素のスイフトのボディを基礎とするでしょうから、先代モデルから重量UPした現行スイフトからスイフトスポーツを開発するうえで、パフォーマンスUPを図るには、よりエンジンパワーに頼らないといけなくなっているのも開発を難しくさせているのかもしれません。
エンジンだけでなく、ミッションやボディ剛性、足回り等、スイフトスポーツとして生産するには強化する必要があります。近年は原材料費や開発費が高騰しており、スズキという決して大メーカーではない会社で、スポーツモデルを開発することが非常に難しくなっているのかもしれませんね。
そういった意味では、敢えて無理して今、スイフトスポーツを開発せず、将来的に日本のEV開発の方向性によって、新たな形で復活してくることも考えられるのではないでしょうか?
たとえば、アルピーヌA290のようなBEVのスポーツモデルとして復活することもあるかも。
「ZC33S ファイナルエディション」ってどんな車?売れ行きは?
ここで、今年の3月19日に発売開始されたスイフトスポーツZC33S ファイナルエディションについて見ていきましょう。
普通のZC33S型スイフトスポーツとの違いを挙げてみます。
<外装の違い>
・専用フロントグリル(グロスブラック)
・フロントフォグランプのLED化、専用フォグランプベセル(グロスブラック)
・専用17インチアルミホイール(グロスブラック)
・専用ブレーキキャリパー(レッド塗装)
・Cピラーに専用デカール
・「Sport」エンブレムがブラック&レッド縁仕様
<内装の違い>
・インパネ、ドアトリム、センターコンソールに「ヒートグラデーション加飾」(焼きチタン風のグラデーションカラー)
・専用ステアリングガーニッシュ(グロスシルバー)
エンジン、ミッション、サスペンション等機能面については、標準のスイフトスポーツと違いはありません。
価格は、標準のスイフトスポーツの、6MT:2,164,800円/6AT:2,236,300円に対し
6MT:2,329,800円/6AT:2,401,300円と、ファイナルエディションが16.5万円高くなっています。
内外装に拘りがある人は、ファイナルエディションを、とにかくスイフトスポーツのスポーツ性能を味わいたい、という人は標準モデルを選ぶのかもしれません。ただし、ファイナルエディションも標準のスイフトスポーツも、在庫限りの販売を行っていますので、すでにディーラーによっては標準モデルもファイナルエディションも売り切れで、注文できない状態になっているのかもしれません。
「どうしてもスイフトスポーツが欲しい!」という場合、中古車や登録済み未使用車を狙うのもアリです。2025年5月18日現在で、中古車検索しますと、ファイナルエディションは全国に6台(そのうちスズキディーラー物件1台)がヒットしました。標準モデルを含めると2024年式以降・ディーラー車で絞っても全国に42台残っているので、探そうと思えば良い固体を探すことができる車種だと思います。
いずれにしても、スイフトスポーツは、出せばそこそこ売れる車であり、スイフトというモデル全体からしてみても、売れ筋グレードであると思います。今回のZC33S ファイナルエディションの売れ行きによっては、スズキも次期作を考えなきゃいけなくなるかもしれませんね。
ZC33S型スイフトスポーツ試乗の感想とまとめ
最初にお話ししましたが、実は以前ZC33S型標準モデルのスイフトスポーツに試乗していましたので、そのときの感想をまとめてみました。
<ZC33S型スイフトスポーツの感想>
スイフトスポーツは、ZC31S型(ZC33S型の2世代前)に試乗したことがあり、そのときは好印象でした。NA1.6リッターのエンジンは、回して官能的というほどではありませんが、いい感じてトルクが出てくるので扱いやすく、コーナーでも特別クイックではありませんが、ダルくもなく、そんなに高いスピード域ではなくても軽い車体を振り回して遊ぶ、という乗り方で楽しさが味わえるクルマだったと記憶しています。
今回のスイスポは、1.4リッターターボとなり、パワーとトルクが向上しております。また、特筆すべきは車両重量が1tを切っていることです。スズキ頑張ってますよね。
試乗車は6速MTモデル、営業担当さんは後部座席に座って試乗スタートしました。「足回り、ちょっと堅いですが・・・」とか「ここの箇所で突き上げが来ますよ!」とか、営業担当さんからしきりに足回りの固さについて声掛けがありましたが、運転してみると、不快な固さは全く感じません。
スポーツモデルなのだが、ガッツリ路面状況をダイレクトに伝えてくるのではなく、最後の最後でゴムブッシュ?がお仕事をして、やんわりとダイレクト感を消しているような感じです。う~ん!?上手い言い方が見つかりませんが、”一枚噛ませて”という表現が合っているかな?
基本的に足回りの固さで言えば、友人のルノー・ルーテシアⅢRSのほうがよっぽど固いですね。ZC31S型も不快な固さは無く、走行中のインフォメーションをしっかり感じられる程度の固さであり、ZC33S型もそれを受け継いでいるような乗り心地、これはやっぱりスズキの良心ってことなのですかね。
ただし、試乗区間のうち1カ所だけ、激しい突き上げを感じるポイントがありました。そこは足回りでいなしきれていないか?軽量Bセグメントハッチバックの限界なのか?
コーナーリングの感じはZC31S型の「ボーイズレーサー的」な性格よりも、少し「グランドツーリング的」な感じを盛り込ませているのでは?といった感じ、やはりターボ化されたことが大きいのかもしれません。でも逆に良い方向に進んだのではないかと思います。6速ATモデルもあるのである意味誰でも万能に使える車になったのかな?と。
1.4リッターターボは、公道では充分以上の速さを持っています。車重は1トンを切っていますから、軽快に走ってくれます。6速MTのクラッチもクセがなく、積極的にMTをオススメしても良いなぁと思わせてくれる車でした。
以上、ZC33S型標準モデルのスイフトスポーツを試乗した感想でした。ZC31S型ほどヒリヒリした感覚は無かったのですが、万能な良い車である印象でした。
さて、それでは今回のまとめに入ります。
一応、ZC33S型のスイフトスポーツはファイナルエディションともども在庫限りで終了し、今現在現行スイフトの「スポーツ」が出てくる情報はありませんので、当分は素のスイフトだけを売っていくことになるのでしょう。
今後、スイフトスポーツを開発するには、エンジンをどうするか?が鍵になるでしょう。ZC33S型スイフトスポーツに載せた1.4リッターターボを発展させるのか?はたまたマイルドハイブリッドを活用したモデルを考えるのか?
現行の素のスイフトが先代よりも車重UPしているので、ZC33S型スイフトスポーツからのパフォーマンスUPを考えると、エンジン選びは容易ではないことが予想できますし、ボディや足回り、ミッション等「スイフトスポーツ」を作るための剛性UPもしなければいけませんし、スズキというメーカーの規模を考えると開発が難しいことは想像できます。
ですので当分の間、現行スイフトの「スイフトスポーツ」は出てこないのではないか?というのが私の予想であり、もしスイフトスポーツが欲しいのであれば、在庫を探すか?中古車や登録済み未使用車を狙うしかないでしょう、それも迅速に動かないと入手は難しいのではないか?と思います。
ということで、今後のスイフトスポーツが出るか?出ないか?については、今後の情報を待ちたいと思いますが、私もこれまでスイフトスポーツを試乗して、良さを感じているだけに、現行スイフトにおいても「スポーツ」を出して欲しいと節に願って終わりにしたいと思います。