ゴルフの車検見積もりを出してもらうために、フォルクスワーゲンディーラーに行きましたら、ID.Buzzが置いてあったので、いろいろ見せてもらいました。
このフォルクスワーゲンID.Buzz。日本では、トヨタのアルファードやヴェルファイア、日産のエルグランドのような比較的大型サイズのミニバンのカテゴリーの車です。
ミニバン大国である日本において、このID.Buzzがどんな売れ行きを出していくのか?興味あるところですが、まずはこの車の特徴を見つつ、どんなユーザーに向きそうなのか?を考えていく記事にしていきます。
ID.Buzzってどんな車?
フォルクスワーゲンID.Buzzは、伝説的な「ワーゲンバス(タイプ2)」(上記写真右の車)のDNAを継承しつつ、近未来的なエレクトリック・ミニバンとして設計された100%電気駆動のEVです。レトロさと先進性を融合した独自のアイコニックデザインが特徴で、現代のライフスタイルに合わせて利便性と快適性を追求しています。
パワーユニットは、完全電気駆動(BEV)で、電気モーターとトランスミッションをリヤアクスルに搭載するRRレイアウトとなっていて、モーターの出力は286ps/560Nm、1充電航続距離はWLTCモードで554kmというものです。
・グレード
上級グレードで、ロングホイールベースの「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」
標準グレードの「ID. Buzz Pro」
の2種類となっています。
グレードによって内外装の装備の差はあるのですが、一番の違いは、外寸とシートアレンジです。
・ロングホイールベースの「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」は
全長×全幅×全高×ホイールベース=4,965mm×1,985mm×1,925mm×3,240mm
シートアレンジは、2-3-2の3列7人乗りとなっています。
・標準グレードの「ID. Buzz Pro」は
全長×全幅×全高×ホイールベース=4,715mm×1,985mm×1,925mm×2,990mm
シートアレンジは、2-2-2の3列6人乗りとなっています。
日本のミニバンと比較してみる
ディーラーに置いてあったID.Buzzは、上級グレードで、ロングホイールベースの「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」でした。普通なら、こんな登場したばかりの新型車を、屋内に入れず屋外で充電させておくのも不自然に思ったのですが、ディーラーの営業さん曰く
「フォルクスワーゲン車史上、一番大きい車でして、普通のやり方ではショールーム内に入れることが出来ないのですよ」とのこと。一度ショールーム内の車をすべて外に出して、車の搬入口を特別に拡げてID.Buzzを入れてから、また他の車を入れないといけないようです。
そんな大きな車、ID.Buzzですが、ここで日本のミニバンと比べてみましょう。
① トヨタ アルファード
全長×全幅×全高×ホイールベース=4,995mm×1,850mm×1,935~1,945mm×3,000mm
ID. Buzz Pro Long Wheelbaseと比べると
全長+30mm、全幅-135mm、全高+10~20mm、ホイールベース-240mmとなりました。
アルファードのパワーユニットは、PHEV、ハイブリッド、ガソリン車の3タイプ。PHEVは6人乗り、ハイブリッドは7人乗りと8人乗りが設定、ガソリン車は7人乗りが設定、とグレードは多岐にわたっています。
また、駆動方式もPHEVは電気式4駆のE-Fourのみですが、ハイブリッドやガソリンのモデルには、E-Fourの他に前輪駆動もあります(ガソリン車には普通の4駆もあり)。この辺りはさすが大型ミニバンの中でも台数が出ているアルファード、しっかりバリエーションを増やして、ユーザーのニーズに応えていますね。
② 日産 セレナ
こちらは、標準グレードの「ID. Buzz Pro」と比べてみます。
全長×全幅×全高×ホイールベース=4,765mm×1,715mm×1,885mm×2,870mm
ID. Buzz Pro と比べると
全長+50mm、全幅-270mm、全高-40mm、ホイールベース-120mmとなりました。
セレナはおなじみのe-power車とガソリン車を用意、2WDも4WDもラインナップされています。グレードによって7人乗りと8人乗りが用意されています。
③ ホンダ ステップワゴン
こちらも、標準グレードの「ID. Buzz Pro」と比べてみます。
全長×全幅×全高×ホイールベース=4,800~4,830mm×1,750mm×1,840~1,855mm×2,890mm
ID. Buzz Pro と比べると
全長+85~115mm、全幅-235mm、全高-85~70mm、ホイールベース-100mmとなりました。
ステップワゴンもe-HEVというハイブリッド車とガソリン車を用意。ハイブリッド車にはFF、ガソリン車にはFFと4WDを用意。シートは基本7人乗りで、メーカーオプションの「2列目6:4分割ベンチシート」装着車は8人乗りになります。
「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」「ID. Buzz Pro」と日本製ミニバンを比べると、ID. Buzzは明らかに全幅が広いのとホイールベースが長いことが分かります。また、日本製ミニバンはユーザーの用途に合わせて、ハイブリッドかガソリンか?2WDか4WDか?そして乗車定員も選ぶことができたりと、モデルバリエーションの多さが魅力ですね。
ID.Buzzってどんなユーザーに向いてるの?
ほんのさわりでしたが、日本のミニバン勢との比較をしました。ではこのID.Buzzってどんなユーザーに合う車なのでしょうか?
① デザインに魅力を感じるユーザー
やはり、フォルクスワーゲンの「ワーゲンバス(タイプ2)」を彷彿とするデザインに惹かれるユーザーにとっては、魅力ありなのでしょうね。
BMWのミニだったり、フィアット500だったり、フォルクスワーゲンで言えばビートルだったり、かつての名車を彷彿とするデザインで復活する車に人気が出たように、ID.Buzzも伝統的なVWファンや、アイコニックなデザインやブランド哲学に共感する方には合うと思います。
また、「普通の車じゃつまらない」「日本製のミニバンには無いデザインの車が欲しい」「他人と被らないEVが欲しい」といった感性派やデザイナー、アーティスト系のユーザーには、レトロでアイコニックなID.Buzzのスタイルは最適でしょう。
② ゆとりがあり、雰囲気の良い室内を欲するユーザー
室内を見ると、さすがに全幅1,985mmあるので、車内の広さに余裕がありますし、シートや内装も明るい色使いでルーミーな雰囲気があります。どちらかというと、物を詰め込むよりも乗員の乗り心地や移動中の楽しい・明るい雰囲気を大切にする車だと言えます。
車での移動に、乗り心地や雰囲気を重視するユーザーにはこの車は向いていると思います。
③ BEV技術への関心が高いユーザー
ID. Buzzは100%電気自動車専用として開発しています。大容量バッテリー搭載により航続距離が向上し、また、広々とした居住空間と荷室を確保するとともに、低重心化や最適な前後重量バランスにより、走行性能も向上します。そんな新技術に関心のあるユーザーには刺さる車となるでしょう。
④ 高性能電気モーターによる高出力とRRレイアウトによる走りを楽しみたいユーザー
リヤアクスル(後輪車軸)に搭載した定格出力89kWの電気モーターが最高出力210kW (286PS)、最大トルク560Nmを発揮。発進直後から最大トルクを発揮し、その動力をRRレイアウトにより余すことなく路面に伝えるトラクション性能がある車です。
フルサイズのボディをものともしない力強い加速、余裕たっぷりの高速巡航を堪能したいユーザーは、注目して良い車だと思います。
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ID. Buzzは日本でウケるのか?
ここまで、ID. Buzzに向いているユーザー層について考えてみましたが、ではミニバン大国でもある日本でこの車は売れていくのでしょうか?
この項では、ID. Buzzを売っていくことについての懸念点をお話していきます。
懸念点① 価格が高い
正直、この点が一番の懸念点ではないかと考えます。
上級グレードの「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」の車両価格が9,979,000円
標準グレードの「ID. Buzz Pro」の車両価格が8,889,000円
と、日本製ミニバンと比べるとかなりの高額になっています。
ちなみに、トヨタのアルファードは、最上級グレードでPHEVモデルの
Executive Loungeこそ10,650,000円とID. Buzzよりも高価ではありますが
ハイブリッドモデルのExecutive Loungeは8,600,000 円 ~ 8,820,000 円
中間グレードのZを選べば5,550,000 円 ~ 6,570,000 円ということで、ID. Buzzよりも安価です。
「アルファードほど高級なミニバンじゃなくていい」というユーザーであれば、
トヨタ ノアの最上位グレードのS-Zが3,890,000 円
日産の セレナ最上位グレードのe-4ORCE AUTECH(4WD)が4,486,900 円
ホンダ ステップワゴンの最上位グレードも4,406,600円
というように、標準グレードの「ID. Buzz Pro」と比べて、圧倒的に価格が安いですし、グレードも豊富なので、ユーザーにID. Buzzを選ばせるのは難しいのではないか?と考えます。
この、現行フォルクスワーゲン車最高値のモデルをどう売っていくのか?どう売れていくのか?興味は尽きません。
懸念点② 車体の大きさ
車体の大きさは、車内の広さに繋がり、ゆとりを生むのですが、さすがに1,985mmの全幅はユーザーを選ぶと思います。狭い路地の通行では難儀するでしょうし、出先の駐車場選びにも苦労するかもしれません。
ディーラーのショールームに入れるのも難儀する大きさの車、どれだけのユーザーが購入できるのか?懸念はありますね。
懸念点③ グレードバリエーションの少なさ
現在のところ、ロングホイールベースの「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」と標準グレードの「ID. Buzz Pro」の2グレードの展開。両グレードともRRレイアウトのみ、さすがに日本のミニバンのようなパワーユニットや駆動方式の組み合わせの豊富さはありません。
これから先、違うパワーユニットの導入は難しいと思いますし、現在はリアにモーターが搭載されたRRレイアウトのみですが、たとえばフロントにもモーターを置いて、駆動させ4WD化することは可能かもしれません。ただ、今後開発して導入となると、かなりの時間を要すると思いますし、その間に売れ行きが悪くなれば、モデル廃止となることも考えられます。
この記事のまとめ
今日の記事では、フォルクスワーゲンのニューモデル「ID.Buzz」についてお伝えしました。
私がフォルクスワーゲンディーラーで見て、営業さんからのお話を聞いて感じたことは、デザインの良さ、車内の雰囲気の良さ、に大きな魅力があり、他のミニバンには無いパワーユニットの性能の良さやRRの駆動方式も含めて魅力はいっぱいある車だと考えています。
ただし、やはり実際に購入するとなると、価格は高く感じますし、車両の大きさも気になります。また、日本製ミニバンと比較するとグレードの少なさも日本で売れるための懸念材料になってくるのではないでしょうか。
ちょうど今週から、ID.Buzzのフェアもフォルクスワーゲン各ディーラーで展開されるようです。気になる方は見に行かれてはいかがでしょうか?